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クリムゾンの迷宮は貴志祐介作品の中で異色であり名作であると思う

小説

クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)

クリムゾンの迷宮は異色であり名作である

貴志祐介さんの作品の中で異端であると思う作品は二つあります。
クリムゾンの迷宮ともう一つは新世界よりですね。
この二つの作品は貴志祐介さんの作品にしては、少しライトな小説家が扱いそうなサバイバル系、ファンタジー系のテーマをよく選んだなあという感想を持っています。
まず、そういったテーマの観点から二つは異色なのですが、さらにクリムゾンの迷宮が異色なのは、わりと物語の展開が速い、テンポが良いということでしょうか。
その点では、クリムゾンの迷宮とは異なり、新世界よりは上・中・下の三巻という長編ですし、やはり貴志祐介さんの物凄く緻密に書き上げて、外堀を埋めて埋めての作業に時間をかけて、本の後半の後半に一気に伏線がつながり物語が加速的に進むという構築美が見られます。
そういえば、ISOLAという作品の時の心理学的説明は、よくここまで調べるなと感心し、読書中に勉強しているような気分にさえさせられました。

他の作品とは違う、このテンポの良さ、速さがクリムゾンの迷宮の特異性だと思うのです。(最近の作品は読んでいないので間違いがあったらすみません)

新世界より(上) (講談社文庫)

新世界より(上) (講談社文庫)

 

 クリムゾンの迷宮では既に始まった状態からスタートする

藤木芳彦は、この世のものとは思えない異様な光景のなかで目覚めた。視界一面を、深紅色に濡れ光る奇岩の連なりが覆っている。ここはどこなんだ? 傍らに置かれた携帯用ゲーム機が、メッセージを映し出す。「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された……」それは、血で血を洗う凄惨なゼロサム・ゲームの始まりだった。『黒い家』で圧倒的な評価を得た著者が、綿密な取材と斬新な着想で、日本ホラー界の新たな地平を切り拓く、傑作長編。

Amazonの商品紹介です

クリムゾンの迷宮では、すでにヨーイドン!のスタートで、言わば鬼ごっこが始まった状態から物語がスタートしているんですよね。他の作品では、結構、何か予兆的な出来事があって、それを調べつつ、また途中で何か出来事が起きるというパターンが多いんです。そして、それをもう物語の世界観や設定に穴の無いようにびっしりと文字で埋めていくというのがいつものスタイルだと思います。
しかし、クリムゾンの迷宮では既に緊迫感のある状態の寸前から始まっています。
いやがおうにも、物語は進展せざるをえません!
途中でサバイバルの要素が現れたり、恐ろしい敵の行動と緊迫感が定期的に書かれるので、テンポが良く感じられ、また読者の注意をそらさせません。

Amazonのレビューでいつもの貴志作品ではないと批判される方もいます。
いつもの構築系の貴志作品をお望みの方には少し趣向に合わないかもしれません。
しかし、バトルロワイヤルやハンガーゲームのようなサバイバル系小説が好きな方、テンポ良く読める小説が好きな方、また貴志裕介さんの普段の作品があまり好きでは無い方でも楽しめると思います。

ただ、やっぱりいつも通り、貴志さんの作品は結末が暗いんですよね。
不安が残るとか何となく虚しいとかハッピーエンドでは終わらないんですよね。
決して最後に悲劇があってとかではないんですけど、何となく悪い方向に物語が続いていくような想像を書き立てて終わるとかそんな感じなんです。
ハッピーエンドがお望みの方には向いていないかもしれませんね。

最近の作品は色々とクローズアップされますが、少し昔のこの作品、
まだ読んでいない人はぜひ、ご一読ください!
それでは!