GANTZを描いた奥浩哉の「いぬやしき」が予想を裏切る面白さ

いぬやしき(1) (イブニングKC)

奥浩哉さんの「いぬやしき」という漫画をご存知でしょうか?

今日は最近、読んで気に入っている漫画を紹介したいと思います。
紹介したいのは、Gantzを描いた奥浩哉さんの新しい連載漫画「いぬやしき」です。
まずは、Amazonの商品紹介でどんな内容かを確認してみてください。

以下は、Amazonの商品紹介の文章です。

いぬやしき(3)

いぬやしき(3)

 

 その男には誰にも言えない秘密がある!58歳サラリーマン2児の父。希望もなければ人望もない冴えない男。しかしある日を境に男のすべては一変するーー。『GANTZ』で漫画表現の極地を切り拓いた奥浩哉がおくる、全く新しい世界がここに!

主人公の設定の特異性が際立つ

そう58歳の初老のサラリーマンが主人公なんです。
じゃあ、最近流行のグルメ漫画とかサラリーマンの社内の話を描いた漫画だろうかと思いますか?違うんです、SF要素満載のバトルアクション漫画なんです。
58歳にしても、かなり老けている70以上と言われても信じてしまうような容姿をした主人公なんです。こんな主人公がアクション漫画の主人公って想像出来ますか?
主人公って若くてカッコいいとかすごく頭が良いとか、若さのエネルギーに溢れるとかそうした魅力を感じる設定が多いですよね、特にバトルアクション物の漫画となればなおさらですよね。

敢えて初老の冴えない、年頃の娘や妻から馬鹿にされる老け顔のサラリーマンを主人公に持ってくるのが挑戦的な作品だと感じますね。そして、そこへある事件がきっかけで、突如として全身がロボット化してしまい通常の人間を遥かに超えた戦闘力を手に入れてしまうという主人公の設定とのアンバランスさが加わります。

継承されたGantzの要素も垣間見える

GANTZ 1 (ヤングジャンプコミックス)

GANTZ 1 (ヤングジャンプコミックス)

 

名作Gantz、好き嫌いはあれども人気作品には違いがなかったですよね。
Gantzは、何の脈絡も無くいきなり後ろからドンと背中を押されて、もう別の世界に足を踏み入れている、そして、始まったと気づくことも教えられることもなく、もう巻き込まれている。親切に何らかのゲームが始まるなんて説明は一切無い。そんな唐突さがあります。そして、脈絡の無い理不尽さ、人は誰しも自分だけは事件に巻き込まれない、事故にあわない、そんな風に思いながら日常を過ごしている。だけど、突然、その日常は壊されて理解できない理不尽な死、暴力に直面する、そんな理不尽さがGantzにはありました。

そんな唐突さ、理不尽さがこの「いぬやしき」に継承されているのです。
突然、ロボット化し強大な力を手に入れた主人公、しかし何故なのか、どうすればいいのか、一切が分からないまま物語が進行するんです。そして、突然の日常生活の崩壊はやはり「いぬやしき」でも継承されています。当たり前の崩壊があまりにあっけなく起こるのが、やはり奥浩哉ワールドなんです。あまりに理不尽で呆気ない死が大量に描かれるのです。そんなアッサリとした死の表現の中で、たまに現れる濃密な人間の感情的描写がまたGantzっぽいんですよ。

敵対する人物との対比

物語が進むにつれて、主人公以外にもう一人全身がロボット化し、兵器化してしまった人物が登場します。彼は主人公と違って、高校の男子学生なんです。
主人公と異なり若さに溢れこれから人生が展開していく人物。かたや主人公は60代にさしかかろうとする初老男性。自分が強大な力を手に入れて、人々を救う事が出来る喜びもあるが、自分がもう人間ではないとの葛藤もあり、また卑屈になってしまっている性格もあってと、すごくアンバランスな内面になっている主人公。
一方で、冷酷で非情な性格で人殺しもゲーム感覚で行う、でも何故か母や幼馴染の友人に対しての思いやりや情も見せる若さを持った男子高校生。
同じような力を与えられた二人が、どうしてこうも善と悪の行動に分かれたのだろう?
今後、この二人がどう関わり物語が進行していくのか非常に楽しみです。

まとめ

Gantz要素も継承しながら、新しい要素、主人公の外面的なカッコよさではなく、内面的要素や敵との関係性に着目してキャラを魅力的にしなければいけないわけで、本当に大変な選択を作者は選んだなと感心します。Gantzよりも大分、スローテンポな展開なので、1巻はまあ準備と考えて、2巻から物語が加速してきますので、もし読む方がいましたら、少し展開の遅さを感じても読み続けて欲しいなと思います。
最初、私も主人公が微妙なキャラだなと敬遠したのですが、これは敬遠するのは損な作品ですよ。この設定を逆に今後どう生かしていくのか見ものですよ。

さて、ではこんなところで。